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手術療法を受ける方へ

更新日:2006年10月01日    掲載日:2006年10月01日

1.手術を受けるための準備

1)手術までの心と体の準備

医師から手術についての説明を受けます。納得して同意書にサインすると、次は入院の手続きになります。

入院手続き後は、自宅で入院の連絡を待ちます。入院待ちをしている期間はとても心配で、長く感じられますが、緊張せずに普段どおりの生活を送ることを心がけましょう。

手術に備え、体力の維持・増進のために毎日運動するとよいでしょう。気分転換にもなります。特に、下肢の筋力を鍛えるためには、散歩をするなど歩くことが望ましいです。また、虫歯のある方は治療を終了しておくことをお勧めします。

(1)適度な運動や呼吸訓練

一般的に、肺活量は手術前と手術後を比べると、下腹部の手術で25%、胸や上腹部の手術では50%以下に低下するといわれています。また、手術によっては、全身麻酔や手術後の傷の痛みで体を起こすことができないことがあります。そうなると、うまく換気ができず(換気不全)、痰(たん)が溜まり、酸素を十分に取り込めなくなる(無気肺)といった、合併症を起こす場合があります。これらを防ぐためには、手術前から少しでも肺の機能を高めておくことが有効であり、呼吸訓練が大切になります。

呼吸訓練のひとつとして、インスピレックス(R)またはスーフル(R)という呼吸訓練器具があります。手術前からこうした器具で呼吸訓練を行い、手術後は手術前にできた基準を目標にして訓練を続けるとよいでしょう。上記のような換気不全、無気肺などの予防にもなります。また、どちらの呼吸訓練器具を使用するかは医師に判断を仰いでください。

スーフル(R) インスピレックス(R)
スーフル(R) 写真 インスピレックス(R) 写真
呼吸訓練

ただし、呼吸訓練を必要としない手術もありますし、呼吸訓練器具を使用せず、深呼吸訓練を行う場合もあります。入院時に病棟の看護師より、これらの説明があります。また、適度な運動をすることをお勧めします。

全身麻酔の手術後は、ほとんどの方は翌日、立つ練習や歩行訓練を行うことになりますが、それまでの生活に比べて、ベッドで寝ている時間が増えます。そのため筋力が低下してしまったり、関節が硬くなったり、体を動かすことが困難になる場合があります。そうならないためにも、手術前から体力の維持・増進を心がけるとよいでしょう。入院前、入院後も検査などに支障がない限り病棟内を歩いたり、外出したりして歩いてみましょう。入院後の外出は医師の許可が必要になりますので、病棟の看護師に確認してください。

(2)禁煙

全身麻酔の影響で手術後、痰(気道分泌物)が増えます。喫煙をしている方の気管の中は炎症を起こしやすく、全身麻酔の影響で痰が多くなります。また、傷の痛みで力強い咳ができず常に痰が絡んだ状態になります。このような状態が続くと気管や肺の中に痰が溜まり、気管を閉塞(無気肺)し、肺にまで炎症(肺炎)を引き起こしてしまいます。

手術後の生活のことも考えて、手術をすると決まった時点から、禁煙に取り組んでみてはいかがでしょう。愛煙家の方が禁煙することは、非常に強い忍耐力が欠かせません。必要に応じて、担当医師に禁煙外来の受診を希望してみてください。

(3)糖尿病

血糖値が高い状態が続くと血液の流れが悪くなり、いろいろな組織に酸素や栄養が行き渡らず、細胞の働きが低下してしまいます。また細菌やウイルスと戦うための免疫機能が低下します。

手術というストレスがかかると、人の体はそれを危機的状態と捉え、体内に糖を貯めようとします。そのため血糖値はさらに高くなり、血流も低下して傷の治りが悪くなります。

糖尿病をお持ちの方は、手術前に血糖のコントロールをしておく必要があります。血糖値が高いといわれたことがある方、糖尿病といわれたけれど、まだ治療をしていない方、治療を受けていても血糖値のコントロールがまだうまくいっていない方は、担当医に早めにご相談ください。

(4)食事について

食事制限はありません。体の調子に合わせて食べられるものを食べましょう。

食事・栄養について」をお読みください。

食べるとむせたり、食べ物が通らないなどの通過障害、吐き気などの消化器症状がある場合は、必要に応じて、医師の指示で食事以外の方法で栄養補給をすることがあります。対処方法としては、細いチューブを静脈の中に通して水分や栄養を送り込む方法(中心静脈栄養)や、皮膚から腸に細い管を挿入したり、鼻から胃や腸にチューブを入れる方法(経管栄養)があります。

(5)不安のある方は

入院・手術などに対して心配や不安がある場合には、看護師にご相談ください。
併せて、「心のケア」をお読みください。

2.手術後の日常生活

1)日常生活上の注意

(1)定期受診について

定期受診は必ず受けることをお勧めします。

(2)何か変だと感じたとき

体調がすぐれないときや、次のような症状が続くときは担当医に相談してください。

  1. 38℃以上の高熱が続く
  2. 何日も食欲がない
  3. 短期間に体重の増減が激しい
  4. 手術をした傷口から、血もしくは浸出液が出る
  5. 静かにしていても息が苦しい

(3)内服について

病院で処方された薬は薬品名や作用を理解し、用法・用量を守って正しく服用しましょう。

市販の薬を使用しているときは、薬同士で作用が強くなったり、効果がなくなってしまうなど、薬が相互に影響したり、副作用を起こすことがあります。担当医にご相談ください。内服薬についてわからないことや不安がある場合は気軽に看護師に声をかけてください。

(4)適度な運動と規則的な生活

退院して数日は自宅で過ごし、散歩や軽い体操、家事の手伝いなどで身体を慣らしたら、徐々に運動・活動範囲を広げていきましょう。疲れたら無理せず休んでください。

  1. 毎日、規則正しく生活し、十分睡眠をとりましょう。
  2. 入浴は循環を良くし、気分転換にもなるので毎日でも構いません。長湯や熱すぎるお湯は避けましょう。手術の種類によっては、シャワーだけにした方がよいこともありますので、退院時に担当医または看護師にご相談ください。
  3. たばこはやめましょう。
  4. アルコールは担当医に確認し、適量にしましょう。
  5. 外出後は、必ずうがいと手洗いをしましょう。

(5)職場復帰について

職場復帰については、担当医に相談してください。また、診断書や紹介状が必要な方は、担当医にご相談ください。

2)創部のケアや傷口から体液を排出する「ドレーン」の管理が必要な場合

(1)創部の観察について

抜糸前の創部は毎日、観察しましょう。

  1. 傷の周りが赤く腫れていないか
  2. 触ると痛みがある、今までの痛みと種類が違う
  3. 急に痛みが強くなった
  4. 閉じている創から血がでてくる、浸出液がある
ドレーンを入れたまま退院となる方は、以下のようなことも毎日観察しましょう。
  1. ドレーンの排液の量が急に増えたり減ったりしていないか
  2. におい・色・排液の性質や状態に変化がないか
  3. ドレーンの排液に血が混じっていないか
  4. ドレーン挿入部の消毒方法については以下の項をお読みください。

(2)消毒方法について

消毒が必要な場合は退院時に医師・看護師より説明があります。
消毒の有無にかかわらず、上記の観察は大切です。毎日行ってください。
消毒方法の実際については、以下の項をお読みください。

「創傷とスキンケア」10.術後創のケア
「創傷とスキンケア」12.ドレーン留置中の管理

38℃以上の高熱が続く場合や、創部やドレーンを観察して異常があった場合は担当医に連絡してください。

3.領域別リハビリテーション

各臓器別手術は、「各種のがんについて」の項を参照してください。

1)喉頭全摘出術

喉頭全摘手術は、一部の喉頭がん下咽頭がん食道がんに対して行われる手術です。手術により声帯を失うため、発声が困難になったり、永久気管孔を造設することによって生活上の変化をもたらします。以下に永久気管孔についてと発声障害について説明します。

永久気管孔(永久気管瘻)
発声障害(失声)

2)舌全摘・亜全摘出術

舌全摘・亜全摘出術は、舌がんに対して行われる手術です。舌は、生きるために欠かせない大きな2つの機能があります。

1.食べることに関する機能としての「咀嚼(そしゃく)」「嚥下(えんげ)」「味覚」
2.話すことに関する機能としての「構音(こうおん)・発声」

これらの機能回復のため、残存舌や舌根(ぜっこん)の運動機能と、頬や口唇の筋肉による補助的な動きを強化することが大切です。

以下に嚥下障害について説明します。

摂食嚥下障害

3)乳房切除術

乳房切除は、乳がんに対して行われる手術です。乳房を切除した患部の側にある上肢の運動障害、しびれ、むくみなどが起こることがあります。また外観が変化することで、社会生活復帰への不安を感じたり、乳房喪失に対する悲嘆を感じたりすることがあります。

以下に、乳房切除術後のリハビリテーションについて説明します。

乳房切除術後のリハビリテーション

4)消化器がん手術(食道・胃・大腸)

消化管がんには食道がん胃がん大腸がんがあります。

消化器がんの手術後は、消化管の形態・機能・経路が変化することにより、食生活への変化をもたらします。また大腸がん手術の場合、排尿・排便機能障害が発生したり、人工排泄口(ストーマ)造設によって、日常生活の習慣がこれまでと変化する場合があります。以下に各がん術後の食事についてと大腸がんの排尿・排便機能障害、ストーマについて説明します。

胃切除後の食事
大腸切除後の食事
大腸がん手術後の排便・排尿障害のリハビリテーション
ストーマケア

5)泌尿器がん手術

泌尿器がんには、膀胱(ぼうこう)がん腎盂(じんう)・尿管がん前立腺がん腎がん精巣腫瘍などがあります。これらの手術の影響により、排尿障害や性機能障害をもたらす場合があります。手術後に排尿リハビリテーションが必要となる代表的なものは、膀胱がんで膀胱を摘出した場合と、前立腺がんで前立腺を摘出した場合の2つです。

以下に、膀胱がんで膀胱を摘出した場合と、前立腺がんで前立腺を摘出した場合の排尿リハビリテーションと性機能障害について説明します。

膀胱を摘出した場合のリハビリテーション
前立腺を摘出した場合のリハビリテーション
性機能障害とリハビリテーション(男性)

6)女性生殖器がん手術

女性生殖器がんには外陰がん子宮頸がん子宮体がん子宮肉腫絨毛(じゅうもう)性疾患膣がん卵巣がん卵巣胚細胞腫瘍などがあります。これら手術の影響により、排尿障害や性機能障害をもたらす場合があります。以下に、手術後の排便・排尿障害と性機能障害について説明します。

女性生殖器がん手術後の排便・排尿障害のリハビリテーション
性機能障害とリハビリテーション(女性)

7)骨軟部腫瘍の手術

悪性骨軟部腫瘍に対しては、がんになった周囲の筋肉の集まり(罹患(りかん)筋群)全体にわたる広範な切除が必要になる場合があります。疼痛(とうつう)、運動障害などから、日常生活への影響があります。さらに、多くは学童期、青年期にある患者さんであり、社会性や人格形成に影響を及ぼして、将来への不安を引き起こします。以下に上下肢それぞれの切断・離断術後のリハビリテーションについて説明します。

上肢切断・離断後のリハビリテ-ション
下肢切断・離断後のリハビリテーション

参考文献

1) 金子芳洋、千野直一.監修:摂食・嚥下リハビリテーション.医歯薬出版株式会社1998
2) 特集"おいしい!"笑顔をもう一度 ナースが取り組む嚥下リハビリテーション.月刊ナーシング、2003; 23: 16-66.
3) 村上美好監修.写真でわかる基礎看護技術(1).インターメディカ、2005
4) 竹尾恵子監修.看護技術プラクティス.学研、2003
5) 和田攻編集.実践臨床看護技術ガイド.文光堂、2003
6) 鶴田早苗、原田和子.エキスパートナースMOOK 10 術後処置マニュアル.小学館、1991
7) 岡田晋吾.エキスパートナース.照林社、2004; 20:


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