悪性リンパ腫細胞を壊して病巣を消失させたり、小さくしたりするために、高いエネルギーのX線を用いて放射線治療を行います。
早期の悪性リンパ腫では、治すことを目的に放射線治療が行われます。また、進行した病巣や再発した病巣、転移した病巣による痛みを軽くし、苦痛を和らげる目的でも行われます。
一般に悪性リンパ腫細胞は、他のがん細胞に比べて放射線に弱い傾向があるので、病巣が大きくがん細胞の数が多い場合でも放射線治療が有効です。
放射線治療には、大きく分けて「(1)診察」→「(2)放射線治療計画」→「(3)実際の放射線治療」→「(4)経過観察」の4つのステップがあります。
| 放射線腫瘍医 | 診察や検査結果をもとに、放射線治療内容を決定します。治療期間中および治療終了後も定期的に診察し、必要に応じて処置を行います。 |
| 放射線治療技師 | 計画に従って照射装置を操作し、患部に放射線を正確に照射します。 |
| 医学物理士 | 放射線治療の精度を正確に管理します。 |
| 看護師 | 治療期間中は、通院や食事など生活全般にわたって看護します。 |
| 事務職員 | 診察、放射線治療の予約や受付等の業務を行います。 |
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体の外観や機能を損なわずに、体の表面や奥の悪性リンパ腫を治療できます。悪性リンパ腫の種類や広がりによって、放射線治療の効果は異なります。局所的、つまり限られた範囲の治療法である放射線治療は、悪性リンパ腫病巣部の広がりがある一定の範囲に限られている場合に、最も効力を発揮することができます。悪性リンパ腫を治癒しうる可能性は、年々高まっているといってよいでしょう。それぞれの悪性リンパ腫に対する詳しい治療の効果については、「2.日本人に多い悪性リンパ腫に対する放射線治療」に書いてあります。
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それぞれの悪性リンパ腫に対して、放射線治療がどのように役立つかについて説明します。正常リンパ球は放射線によって壊れやすいので、がん化した悪性リンパ腫の多くは放射線に対して弱く、比較的治りやすい病気といえます。最近の新しい技術の放射線治療や新抗がん剤、分子標的剤の開発、有害な副作用を軽減する支持療法等の進歩により、年々治癒する患者さんが増えてきています。
全身的な治療手段としての、化学療法や抗体療法などの薬物療法をしっかり行うことが重要です。放射線治療は、通常は薬物療法を行った後に、病巣部の悪性リンパ腫細胞の根絶を目標として行われます。
局所的治療、つまり限られた範囲の治療法である放射線治療は、リンパ腫の広がりがある範囲に限られた場合(臨床病期1〜2期)に効力を発揮します。
これまでの臨床研究により、化学療法後に放射線治療を行うことで、有害な副作用を少なくして優れた治療効果を期待できます。化学療法によってリンパ腫が消えてしまったかのようにみえても、目に見えない残存細胞がある可能性があり、引き続き放射線治療を行うことにより治癒率が高まる場合があります。病巣からやや広めの範囲に照射を行います。病巣部位や大きさなどにより、照射技術は患者さんごとに工夫します。一般に、30〜40Gyを15〜25回程度に分割して、3〜5週間かけてほぼ毎日(週に4〜5日)治療します。
病期が1〜2期であれば、75〜85%の治癒が期待できます。再発する場合は、治療から2、3年以内に放射線で治療していない場所に多く再発することがわかっています。
マルトリンパ腫は、体を守る防衛の最前線である粘膜に発症する、おとなしい種類の悪性リンパ腫です。全身に急に広がることはありません。胃で発症する場合はピロリ菌が関連していて、ピロリ菌を除菌すると多くが改善することがわかっています。ほかに目の周囲、喉、唾液腺、甲状腺(こうじょうせん)、乳腺等に起こりますが、その原因はよく解明されていません。
病期が1〜2期であれば、30〜36Gyの比較的少ない量を15〜25回程度に分割して3〜5週間かける放射線治療により、80〜90%の患者さんが治癒します。早期であれば放射線治療だけでよく治るので、化学療法や抗体療法はしなくてもよいと考えられています。
濾胞性(ろほうせい)リンパ腫は、病巣部が限局しているようにみえても、実は目に見えない転移が全身のリンパ組織に広がっている傾向があります。全身的な治療手段としての化学療法や抗体療法が、一般的な選択です。病期が1〜2期の早期であれば、30〜36Gyの比較的少ない量をあてる放射線治療により、およそ50%の患者さんが治癒します。
ホジキンリンパ腫は欧米人に多く日本人にはまれです。リンパ節から発症し、連続してリンパ節に広がっていきます。連続した広い範囲のリンパ節(領域)を放射線で治療することにより、80〜90%の患者さんが治癒します。しかし現在の標準治療は、先に化学療法を行って、放射線治療する範囲を狭くし、放射線の副作用を軽くする方法です。
皮膚だけに広がっていく特殊な悪性リンパ腫です。このリンパ腫に対しては、全身の皮膚表面だけを治療できる電子線を用いた特殊な放射線治療(全皮膚電子線治療、部分照射他)を行うことがあります。全皮膚電子線治療は、立った姿勢で体の前後左右斜めの6方向から、くまなく全身の皮膚に放射線を照射します。
ほかにも特殊な悪性リンパ腫が何種類かあります。鼻や脳、睾丸(こうがん)等に発生したリンパ腫、結核後の膿胸(のうきょう)、免疫不全に関連したリンパ腫、臓器移植に関連したリンパ腫等は、患者さん個々の病状に特に配慮して放射線治療を行います。
全身照射の役割は、悪性リンパ腫細胞の死滅と拒絶反応の予防の2つがあります。全身照射には、抗がん剤と交叉耐性(こうさたいせい)がないこと、照射不能の部位がないこと、重要な臓器が遮蔽(しゃへい)できること等の利点があります。病院ごとに全身照射の方法は少しずつ違っていますが、どれが優れているということはあリません。ただし、準備や治療に時間がかかります。
表 放射線治療に関する主な急性有害反応
| 照射部位 | 急性有害反応の種類 | 自己管理・看護 | 治療 |
| 皮膚 | 1.発赤、紅斑、ぴりぴり感、びらん、爪変形 | 保護 | ステロイド軟膏 |
| 2.潰瘍(かいよう)、浸出液、かさぶた | 消毒 | ||
| 3.脱毛 | かつら 帽子 | ||
| 頭部 脳神経 |
1.倦怠感、脱力感 | 安静・休息 | 精神安定剤など |
| 2.吐き気、嘔吐(おうと)、頭痛 | 運転注意 | 制吐剤(せいとざい)など | |
| 3.味覚やにおいの変化 | (亜鉛製剤) | ||
| 4.耳の炎症により難聴、耳鳴り | |||
| 5.レルミッテ兆候(屈曲位(くっきょくい)で下肢に電撃痛) | (自然軽快) |
||
| 6.末梢神経障害(便秘、しびれ、こわばり) | ビタミン剤(B12) | ||
| 頭頸部 | 1.唾液の減少、口の渇きとねばつき、口内炎 | うがい | 人工唾液など |
| 2.味覚の変化や低下 | やさしい歯磨き | ハチアズレ | |
| 3.においの変化 | |||
| 4.食欲の低下、吐き気 | 制吐剤、点滴 | ||
| 5.飲み込み困難・違和感、口と喉の痛み | 鎮痛剤、粘膜保護薬 | ||
| 6.体重減少、だるさ | 休息 | 点滴 | |
| 7.呼吸時の違和感・気道の腫(は)れ | 吸入 | ||
| 8.嗄声(させい:声がれ)、咳、声が出しにくくなる |
蒸気吸入 | 吸入 | |
| 9.鼻閉(鼻づまり) | 加湿器 | 鼻洗浄 | |
| 10.外耳道の炎症(じくじく)、難聴、耳鳴り | 点耳薬 | ||
| 11.目の乾燥、易刺激性(いしげきせい:ごろごろ感) | 点眼薬 | ||
| 胸部 (呼吸器 乳腺 食道) |
1.食道の炎症による痛み、飲み込み困難、胸やけ |
軟菜(軟らかくしたおかず)、お粥 | 粘膜保護薬 |
| 2.食欲低下、吐き気、嘔吐、体重減少 | 流動食 | 点滴 | |
| 3.肺の炎症による呼吸苦、痛み、熱、咳 |
蒸気吸入 | 鎮咳剤(ちんがいざい)、ステロイド剤 | |
| (放射線性肺臓炎) | 酸素 | ||
| 上腹部 消化器 |
1.胃炎、胃潰瘍、食欲低下、嘔気(おうき)、嘔吐 | 軟菜(軟らかくしたおかず)、お粥 | 抗潰瘍剤、粘膜保護薬、点滴 |
| 2.腸の炎症で下痢(げり)を生じる | 低残渣(ていざんさ)、低脂肪食 | 下痢止め、点滴 | |
| 骨盤部 (泌尿器 生殖器) |
1.下痢 | 消化良い食事 | 下痢止め |
| 2.直腸・肛門の炎症により、痛み、浸出液、出血が生じる | ウォシュレット 水分補給 |
軟膏、保護剤 | |
| 3.膀胱(ぼうこう)の炎症により、頻尿、痛み、血尿が生じる | 止血剤/鎮痛剤 | ||
| 4.生理の周期の異常 | パートナーの理解 | ||
| 5.膣からの分泌液、痛み、易刺激性、出血 | 膣錠 |
| 照射部位 | 遅発性有害反応の種類 | 自己管理 | 治療 |
| 皮膚 | 1.光沢のある薄い皮膚、皮膚の肥厚 | 保湿クリーム | 非ステロイド軟膏 |
| 2.皮膚の色の変化:色素沈着、脱色 | |||
| 3.毛細血管の拡張 | |||
| 4.永久脱毛、薄い頭髪、巻き毛 | かつら 帽子 | ||
| 頭部 (脳・ 脊髄) |
1.永久脱毛、髪の性状や色の変化 | かつら 帽子 | |
| 2.眠気、疲れ、集中力の低下、根気がなくなる | 運転注意 | ||
| 3.複雑な計算を間違いやすくなる | ゆっくりした作業 | リハビリ | |
| 4.思考力および記憶力の低下(大線量の場合) | |||
| 5.下垂体(かすいたい)の機能低下 | ホルモン補充 | ||
| 頭頸部 (耳鼻 咽喉 領域) |
1.口の渇き、味覚の変化 | うがい | 人工唾液 |
| 2.歯の腐食、歯肉の変化 | 歯磨き | イソジン | |
| 3.照射部位のむくみ(特に下顎部(かがくぶ)) | |||
| 4.嗄声、痛み、飲み込みや呼吸時の違和感 | 蒸気吸入 | 吸入気管切開 | |
| 5.骨、特に下顎骨の障害(大線量の場合) | 加湿器 | リハビリ | |
| 6.目の乾き、白内障、視力障害(大線量の場合) | 点眼薬 | ||
| 7.甲状腺(こうじょうせん)の機能低下 | ホルモン補充 | ||
| 胸部 (呼吸器 乳腺 食道) |
1.放射線性肺臓炎による痛み、熱、咳 | 蒸気吸入 | 咳止め |
| 2.肺の萎縮による呼吸苦(放射線性肺繊維症) | 呼吸訓練 | ステロイド剤 | |
| 3.乳房の皮膚乾燥 | クリーム | ||
| 4.まれに心筋梗塞(しんきんこうそく) | 安静 | 循環器科 鎮痛剤 |
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| 5.肋骨骨折(ろっこつこっせつ、大線量の場合) | |||
| 上腹部 (消化器) |
1.肝臓、腎臓の機能障害 | 減塩食 | 内科診察 |
| 2.まれにイレウス(大線量の場合) | 低脂肪食 | 抗胃潰瘍剤 | |
| 骨盤部 (泌尿器 生殖器) |
1.卵巣機能低下により不妊、早期閉経を生じる | ホルモン補充 | |
| 2.膣粘膜乾燥、萎縮(いしゅく)、痛み、性的機能の低下 | 保湿剤 パートナー理解 |
膣錠 下剤、保護剤 |
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| 3.まれにイレウス、慢性の下痢(大線量の場合) | |||
| 4.膀胱の萎縮、頻尿、血尿、繰り返す膀胱炎 | |||
| 5.会陰部(えいんぶ)や下肢のむくみ | 弾性ストッキング | ||
| 四肢 (骨軟部) |
1.軟部組織や筋肉の萎縮による運動制限、腫脹 | 過負荷な運動をしない | リハビリ |
| 2.関節の障害による不可逆性の可動制限、痛み、関節炎 | 弾性包帯 | 鎮痛剤・手術 | |
| 3.照射部の四肢の腫れ(大線量の場合) | マッサージ | ハドマ |