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TOP各種がんの解説 > 悪性リンパ腫の放射線治療の実際

悪性リンパ腫の放射線治療の実際(あくせいりんぱしゅのほうしゃせんちりょうのじっさい)

更新日:2006年10月01日    掲載日:2006年10月01日

1.放射線治療についての一般的知識

1)放射線治療はどんな目的で行われるのでしょうか。

悪性リンパ腫細胞を壊して病巣を消失させたり、小さくしたりするために、高いエネルギーのX線を用いて放射線治療を行います。

早期の悪性リンパ腫では、治すことを目的に放射線治療が行われます。また、進行した病巣や再発した病巣、転移した病巣による痛みを軽くし、苦痛を和らげる目的でも行われます。

一般に悪性リンパ腫細胞は、他のがん細胞に比べて放射線に弱い傾向があるので、病巣が大きくがん細胞の数が多い場合でも放射線治療が有効です。

2)放射線治療の原理を説明します。

「放射線とは何ですか?」
治療に用いる放射線は、高エネルギーのX線・電子線です。放射線は、がん細胞にあたるとがん細胞を壊すエネルギーに変わります。体にあたった放射線はエネルギーに変わって消滅するので、放射能としていつまでも残ることはありません。放射線治療の効果や副作用は、照射したところだけに出ます。放射線照射を受けているときには、痛くもかゆくもありません。

「どうして放射線で悪性リンパ腫細胞が壊れるのですか?」
高エネルギー放射線は、悪性リンパ腫細胞の大事なところ(DNAなど)を瞬時に傷つけます。その傷が原因となって、照射後数時間から数十日で悪性リンパ腫細胞は壊れます。悪性リンパ腫細胞は放射線による傷を修復する力が弱く、壊れやすい細胞です。周囲にある正常細胞も放射線によって同様に傷を負いますが、幸いなことに正常細胞の多くは、数時間後に傷を修復できます。正常組織のダメージが大きくならないように放射線を少量ずつ何回かに分割して照射していくと(分割照射)、悪性リンパ腫細胞はだんだん壊れて数が減ります。正常細胞は弱っても回復力があるので、数の減りかたは緩(ゆる)やかです。この差を利用して放射線治療をします。

分割照射
分割照射

1 放射線によって、悪性リンパ腫細胞の大事な構造DNAが壊れます。
1 放射線によって、悪性リンパ腫細胞の大事な構造DNAが壊れます。

2 悪性リンパ腫細胞がばらばらの断片になり、残骸が掃除されて消失します。
2 悪性リンパ腫細胞がばらばらの断片になり、残骸が掃除されて消失します。

3 正常細胞には放射線による細胞内の傷を修復し、回復できる仕組みがあります。
3 正常細胞には放射線による細胞内の傷を修復し、回復できる仕組みがあります。

正常細胞は放射線により少しは壊れますが、多くは回復します。この正常細胞の減少が、治療中に起こる有害な副作用の原因です。正常細胞の減少による有害な副作用が重くならないような、放射線照射の線量、回数がわかっています。

3)放射線治療の方法を説明します。

放射線治療には、大きく分けて「(1)診察」→「(2)放射線治療計画」→「(3)実際の放射線治療」→「(4)経過観察」の4つのステップがあります。

(1)最初に放射線治療科を受診して、診察を受けていただきます。
放射線治療科(放射線科に含まれている病院もあります)の外来で、担当する放射線腫瘍医から放射線治療についての説明があります。診察と検査結果をもとに、放射線腫瘍医と放射線治療の方針、内容(どの部位に、どの装置を使って、どのくらいの放射線の量を、いつまでに照射するのか、期間は…他)を相談し、予定を立てます。
放射線治療の適応を判断

放射線治療は放射線腫瘍医、放射線治療技師、医学物理士そして看護師がチームで行います。
放射線腫瘍医 診察や検査結果をもとに、放射線治療内容を決定します。治療期間中および治療終了後も定期的に診察し、必要に応じて処置を行います。
放射線治療技師 計画に従って照射装置を操作し、患部に放射線を正確に照射します。
医学物理士 放射線治療の精度を正確に管理します。
看護師 治療期間中は、通院や食事など生活全般にわたって看護します。
事務職員 診察、放射線治療の予約や受付等の業務を行います。


(2)CTやX線位置決め装置を用いて放射線治療する位置を決めます。
「放射線治療する病巣は、体の外からどうやってわかるのですか?」
最初にCT撮影をして、病巣の画像診断を行います。このデータから、体の中にある悪性リンパ腫病巣の位置を確認し、放射線をあてる標的の大きさや範囲を決定します。放射線治療計画用のコンピューターを用いて、放射線の量や方向、範囲を細かく正確に計算します。
CT撮影

「放射線の量を決めるのにどれくらいかかるのですか?」
放射線治療の方法が決まったら、照射する線量の計算をします。悪性リンパ腫の状態によっても異なりますが、計画に要する時間は1時間から3日と幅があります。位置を決めた日から放射線治療をはじめることができない場合があります。かたまりとしては目に触れなくても、悪性リンパ腫細胞のいくつかが残っていることがあるので、決められた回数の放射線治療をします。放射線治療したところから再発することはほとんどありません。
対応可能比

「放射線をあてる範囲はどこですか?」
体の中のリンパ節は、図のようなリンパ節領域という位置的な区分けがあります。本来、それぞれのリンパ節はリンパ管でつながっていますが、大まかに場所で区分けすることができます。悪性リンパ腫に対する放射線治療では、こうしたリンパ節領域を単位として、目に見えない広がりが危惧される範囲を治療範囲にすることが原則です。
リンパ節領域
放射線をあてる範囲

「位置決め(シミュレーション)とは何ですか? なぜ体に印をつけるのですか?」
治療計画ができると、治療部位の皮膚に消えにくいインクで点や線の印をつけます。毎回、病巣の位置を確認しなくてすむように、皮膚表面に位置合わせのための印をつけることがあります。消えにくい無害なインクを使いますが、入浴時に丁寧に洗うと消えてしまいますのでご注意ください。レーザーポインターを用いて、放射線を照射するリニアック(直線加速器)の中心に体の印を合わせます。
写真

「なぜ、放射線治療のために固定具、マスクをつけるのですか?」
正確に放射線治療するために、体の動きを抑える固定器具を用いることもあります。特に動きやすい頭や顔や頸部(けいぶ)等の場合は、患者さん個別にマスク(シェル)を作成します。ちょっと窮屈(きゅうくつ)ですが、顔に印を描かなくてすむことが利点です。頭部の目や神経等の大切な部分を、放射線から避けることが可能です。

「放射線治療の準備について説明してください。」
1 放射線治療計画用のCT(病気の診断に用いたCTとは別に、もう一度CTを撮影しなければなりません)と、X線位置決め装置の写真
1 放射線治療計画用のCT(病気の診断に用いたCTとは別に、もう一度CTを撮影しないといけません)と、X線位置決め装置の写真

2 CTとレントゲン写真から、放射線治療の計画を立案します。図のような治療範囲を決めます。
レントゲン写真 治療範囲

3 専用のコンピュータを用いて、CT画像をもとに放射線治療計画を立てます。照射方向や機械の出力等を計算します。計画をもとに、前述のような印を体につけます。
3 専用のコンピュータを用いて、CT画像を元に放射線治療計画を立てます。照射方向や、機械の出力などを計算します。前述のように計画を元に、体に印をします。


(3)実際にリニアックで放射線治療を開始します。

写真

「どんな機械で放射線をあてるのですか?」
リニアックという大型治療機器を用います。電気の力で高エネルギーのX線を発生させ、体の外から体内の病巣部を治療(照射)します。位置決め装置で、体表に描いた点や線をもとに照射します。
初回時や照射の方向、範囲を変更したときには、確認の写真を撮ります。

「放射線治療は1人で受けるのですか?」
放射線治療室では、1人で治療を受けます。痛くも熱くもありません。その間、放射線治療技師がテレビカメラでずっと見守っていますので安心してください。治療時間は1部位につき約1〜10分です。治療中は動かないようにしてください。マイクを通して会話もできますので、困ったことがあれば体を動かさず、そのままの姿勢でお知らせください。放射線照射中に治療装置が動く場合もありますが、決して体に当たることはありませんのでご安心ください。
写真

「1回の治療に時間はどのくらいかかりますか?」
毎回の放射線治療時間は、位置合わせが1分程度で照射時間は1〜5分程度です。更衣時間も含めて1回に10分程度です。短時間ですみますから、正確に治療するために、治療寝台の上では動かないでじっとしていてください。

「何回もあてるのですか?」
治療の目的や悪性リンパ腫細胞の種類、病巣の場所等により、放射線治療の回数は1〜30回までと異なります。通常の放射線治療のスケジュールは、月曜から金曜まで週に3〜5日で、1日1〜2回照射し、1〜5週間続けて行います。予定された回数の放射線治療が必要です。悪性リンパ腫病巣が良くなっているからといって、途中で治療をやめないでください。

放射線治療中は、原則として週1〜2回は医師の診察を受けていただきます。時々位置がずれていないことを確認するために、X線照合写真を撮ります。
写真

「治療期間中は、普通の生活ができますか?」
放射線治療中の生活は、おおむね普段どおりでけっこうです。少し体が疲れやすくなるので、十分な休息や睡眠をとってください。治療中でも入浴してかまいませんが、疲れない程度にしてください。栄養のあるバランスのとれた食事を心がけてください。


(4)放射線治療後の診察と効果判定について
放射線治療効果は、悪性リンパ腫の種類や部位によって、開始後すぐに現れるものから1〜2ヵ月してから現れるものまでさまざまです。放射線治療終了後も、血液内科の診察日に合わせて放射線腫瘍医による定期検診が必要な場合があります。

4)放射線治療の効果を説明します。

体の外観や機能を損なわずに、体の表面や奥の悪性リンパ腫を治療できます。悪性リンパ腫の種類や広がりによって、放射線治療の効果は異なります。局所的、つまり限られた範囲の治療法である放射線治療は、悪性リンパ腫病巣部の広がりがある一定の範囲に限られている場合に、最も効力を発揮することができます。悪性リンパ腫を治癒しうる可能性は、年々高まっているといってよいでしょう。それぞれの悪性リンパ腫に対する詳しい治療の効果については、「2.日本人に多い悪性リンパ腫に対する放射線治療」に書いてあります。

「放射線治療で悪性リンパ腫が治る条件は、どのようなものですか?」
遠隔転移がなく、悪性リンパ腫病巣が小さくてがん細胞の数が少ない場合:例えば、目の結膜にできた悪性リンパ腫は早期発見されることが多く、悪性リンパ腫細胞の数が少ないので、放射線治療単独でも90%程度治癒します。

「放射線治療で治らない悪性リンパ腫があるのは、なぜですか?」
遠隔転移がある場合では、部分的な治療である放射線治療では治りません。全身的な治療(化学療法、抗体療法等)が必要です。放射線に弱い器官である肺、小腸にできた悪性リンパ腫の場合は、たくさんの放射線をあてることができないため、放射線治療では治りにくい傾向があります。繰り返して多種類の化学療法剤に抵抗性があった悪性リンパ腫細胞は、放射線に対しても抵抗性になります。

5)放射線治療の副作用を説明します。

「後遺症や有害な副作用の心配はないのですか?」
悪性リンパ腫を治すためには、放射線治療による種々の不快な副作用(有害反応、毒性)を我慢しなければなりません。がんの治療ではどのような治療であっても、多かれ少なかれ必ず有害な副作用を伴います。放射線治療による有害な副作用の主なものは、放射線により粘膜が荒れて痛くなったり、唾液が出にくくなったり、食欲低下や吐き気が現れることです。放射線療法を行っている間のこうした副作用は、治療終了後1〜2週間で軽快します。

「副作用には個人差があるのですか?」
有害な副作用の発生や程度には、かなりの個人差があります。同じ照射線量でも軽症ですむ患者さんもいれば、強い副作用に苦しむ患者さんもいます。残念ながら現在、こうした個体差をあらかじめ予測する有効な手段はありません。大多数(95%)の患者さんに、有効かつ安全である照射線量を用います。先に化学療法を受けた場合は有害な副作用の発生頻度が高くなり、その程度が重くなる場合があります。

「遅れて発生する放射線の副作用があるのですか?」
放射線治療の有害反応には、放射線治療中に発症し、照射終了後2〜3週間のうちに回復もしくは軽快する副作用と、放射線治療後数ヵ月から数年経過して発症する遅発性の副作用があります。そのために、放射線治療終了後も定期診察を受けてください。

「治療中に発生する副作用には、どのようなものがあるのですか?」
皮膚・粘膜は厚さが薄くなり、体を防御する能力が低下して物理的刺激を受けやすくなり、炎症が起こります。放射線治療期間の中盤から後半にかけて、症状が強まることが一般的です。白血球減少や血小板減少、貧血など骨髄抑制が発生します。これらの副作用は照射途中から回復します。また、頭頸部に放射線治療すると唾液が出にくくなり、改善しにくいことがあります。
放射能治療の副作用 写真

「放射線治療を受けると、気分が悪くなりますか?」
一般的に、照射開始時から終了後約2週間まで倦怠感(けんたいかん)・疲労感が継続します。日常活動をゆっくり行い、休息を十分とるとよいでしょう。食欲不振、吐き気が長く続く場合があります。治療後半期から脱水になっていることが多く、水分補給が重要です。油っぽい食品は避けて、消化しやすい食事を少量ずつ1日数回に分けて摂取するようにします。レモン水やアズレン含嗽(がんそう)によるうがいによって口腔内を爽快にすることも、症状緩和の一助となります。

「治療目的によって副作用は違いますか?」
悪性リンパ腫の治癒を目指す場合は、比較的多めの線量を照射するのが一般的です。放射線治療中の有害な副作用はやや重くなりますが、終了後しばらくすると回復します。化学療法を放射線治療の前や治療中に併用した場合では、副作用が重くなったり治りにくくなることがあります。悪性リンパ腫による症状を緩和させる目的で照射する場合には、放射線による副作用を極力発生させないように、必要最低限度の線量を照射します。しかし、全身状態が衰弱している患者さんでは、低線量照射でも有害な副作用が発生する場合があります。

「放射線治療は痛いですか?」
放射線照射を受けているときは、痛くもかゆくもありません。照射開始時から照射終了後1〜2週間くらいに、粘膜が荒れてきて痛みを伴うようになります。特に極度の貧血や糖尿病等があると、粘膜の痛みが増悪する場合があります。高齢者では、回復までに時間がかかる傾向があります。こうした放射線治療中の粘膜炎に対する治療の基本は、粘膜保護剤による保護と点滴や高カロリー輸液などの栄養療法、薄くなった粘膜からの感染予防です。照射後に化学療法を追加して行う場合、粘膜炎の再増悪(リコール)現象を認める場合があります。

「放射線治療は、体が熱くなったりしますか?」
放射線治療を開始して2〜3週すると、日焼けのように皮膚が赤くなり腫(は)れてきます。4〜5週になると、すれるところでは皮がむけやすくなります。放射線治療中は、照射野内の皮膚に湿布したり、軟膏(なんこう)を塗布しないことが原則です。ただれなどの副作用が発生した場合の治療の基本は、障害部位の保護および感染予防です。照射後に化学療法を行う場合、皮膚炎の再増悪(リコール)現象を認める場合があります。照射後も照射野内の皮膚に絆創膏(ばんそうこう)を貼ったり、入浴時に石鹸をつけてごしごしこすったりしないようにします。

「放射線治療で風邪を引きやすくなったり、抵抗力が落ちたりしますか?」
放射線療法によって白血球が減少したり、骨髄抑制が長引いたり、免疫(細菌、真菌(カビ)、ウイルス等の感染を防御する体のシステム)の働きが低下することがあります。重症な免疫低下は起こりませんが、まれに肺炎や帯状疱疹(たいじょうほうしん、身体に潜んでいた水ぼうそうのウイルスが殖えて水ぶくれを伴う発疹(ほっしん)が現れ、しばしば強い痛みを伴います)を認めることがあります。また、免疫が低下して感染しやすいので、はしか、水ぼうそう、風疹(ふうしん)、インフルエンザなどの伝染性感染症患者、ワクチン摂取後の人との接触を避けるようにします。うがい、入浴を励行するとよいでしょう。制汗剤は汗腺を塞(ふさ)ぎ、皮膚感染を助長するので好ましくないようです。庭仕事など土を触る場合や長時間の皿洗いでは、切り傷を負わないようにゴム手袋をするようにします。

「遅れて発生する副作用には、どのようなものがあるのですか?」
放射線治療後に最も問題になることは、特徴的な遅発性有害反応です。遅発性の有害な副作用とは治療中の副作用の延長ではなく、照射野内の細胞分裂の遅い正常細胞の死、機能低下が原因で、放射線治療後数ヵ月から数年の潜伏期間の後に発症する、回復しにくい副作用です。例えば、治療数年後に血管の細胞が壊れるために、小さな血管が詰まりやすくなります。放射線治療を行う場合は、重篤(じゅうとく)な遅発性有害反応を起こさないように総照射線量を決めます。脊髄に過剰な線量が照射されると、数年後に手足が麻痺して動けなくなったり、感覚が鈍くなったり、排泄(はいせつ)の感覚がなくなったりすることがあるからです。こうした後遺症は放射線脊髄症と呼ばれ、もとのように回復しない場合が大多数のため、注意する必要があります。

「放射線でがんにならないのですか?」
放射線による正常細胞の小さな傷は、長い経過の後に遺伝子の変異をもたらし、放射線誘発がんが発生することがあります。こうしたがんを「二次発がん」といいます。放射線治療による二次発がんの頻度は、放射線治療を受けた患者さんの0.1%です。まれであり、目前の悪性リンパ腫の治療を優先することが多いと思います。ホジキンリンパ腫の若年女性患者さんの場合、胸部に広範囲に放射線治療すると、年を経るごとに乳がんの発生率が高くなることが報告されています。長期的な視点に立って、放射線治療による利益と不利益を考慮した治療戦略を立てなくてはなりません。

「体のほかの場所や家族に影響はありませんか?」
原理の項目で述べたように、体にあたった高エネルギーX線は、エネルギーに変わって消滅するので残留することはありません。放射線治療は、高エネルギーX線を照射したところだけに効果が出ます。放射線をあてていないところには、効果も副作用も起こりません。ましてや家族や同居している人への影響はありません。

6)よくある質問と回答を説明します。

「たばこを吸ってもよいですか?」
たばこは放射線の治療効果を減弱させます。さらに放射線による有害な副作用を重症化させ、その発生頻度も高めるので、禁煙を徹底したほうがよいと思われます。

「お風呂に入ってもよいですか?」
放射線治療のための体の印を消さないように、また、弱っている照射野の皮膚をゴシゴシこすらないようにすれば入浴は可能です。むしろ、体を清潔に保つためにも入浴をお勧めします。

「お酒を飲んでもよいですか?」
少量の飲酒は可能ですが、粘膜に炎症を起こしている時期は差し控えたほうがいいでしょう。

「ご飯を食べてすぐに放射線治療を受けてもよいですか?」
胃や小腸に対して放射線治療するのでなければ、食後すぐに放射線治療を受けても大丈夫です。

「仕事(家事)をしながらの治療は可能でしょうか?」
通常の放射線治療は、短時間で少ない負担ですみますので、通院での治療が可能です。事務作業をしながら治療を受ける患者さんもいらっしゃいます。しかし、放射線治療と同時に化学療法を受ける場合は、一定期間は仕事よりも治療に専念するほうがよいでしょう。

「治療のあとが残りませんか?」
通常の放射線治療では皮膚にあとは残りませんが、皮膚が乾燥肌になり、血管が浮き出るようになる場合があります。

「副作用が起こったら、どんな薬を使うのですか?」
副作用の種類によって、症状を軽減する方法はさまざまです。残念ながら放射線治療の副作用を治す薬はありませんが、症状を薬で軽減することは可能です。例えば、粘膜が荒れて痛くなってきた場合には、粘膜保護剤や痛み止めを処方します。

2.日本人に多い悪性リンパ腫に対する放射線治療

それぞれの悪性リンパ腫に対して、放射線治療がどのように役立つかについて説明します。正常リンパ球は放射線によって壊れやすいので、がん化した悪性リンパ腫の多くは放射線に対して弱く、比較的治りやすい病気といえます。最近の新しい技術の放射線治療や新抗がん剤、分子標的剤の開発、有害な副作用を軽減する支持療法等の進歩により、年々治癒する患者さんが増えてきています。

1)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 ‐広がりやすく悪性度の高いリンパ腫‐

全身的な治療手段としての、化学療法や抗体療法などの薬物療法をしっかり行うことが重要です。放射線治療は、通常は薬物療法を行った後に、病巣部の悪性リンパ腫細胞の根絶を目標として行われます。

局所的治療、つまり限られた範囲の治療法である放射線治療は、リンパ腫の広がりがある範囲に限られた場合(臨床病期1〜2期)に効力を発揮します。

これまでの臨床研究により、化学療法後に放射線治療を行うことで、有害な副作用を少なくして優れた治療効果を期待できます。化学療法によってリンパ腫が消えてしまったかのようにみえても、目に見えない残存細胞がある可能性があり、引き続き放射線治療を行うことにより治癒率が高まる場合があります。病巣からやや広めの範囲に照射を行います。病巣部位や大きさなどにより、照射技術は患者さんごとに工夫します。一般に、30〜40Gyを15〜25回程度に分割して、3〜5週間かけてほぼ毎日(週に4〜5日)治療します。

病期が1〜2期であれば、75〜85%の治癒が期待できます。再発する場合は、治療から2、3年以内に放射線で治療していない場所に多く再発することがわかっています。

2)MALT(マルト)リンパ腫、広がりにくく悪性度の低いリンパ腫

マルトリンパ腫は、体を守る防衛の最前線である粘膜に発症する、おとなしい種類の悪性リンパ腫です。全身に急に広がることはありません。胃で発症する場合はピロリ菌が関連していて、ピロリ菌を除菌すると多くが改善することがわかっています。ほかに目の周囲、喉、唾液腺、甲状腺(こうじょうせん)、乳腺等に起こりますが、その原因はよく解明されていません。

病期が1〜2期であれば、30〜36Gyの比較的少ない量を15〜25回程度に分割して3〜5週間かける放射線治療により、80〜90%の患者さんが治癒します。早期であれば放射線治療だけでよく治るので、化学療法や抗体療法はしなくてもよいと考えられています。

3)濾胞性リンパ腫、広がりやすく悪性度の低いリンパ腫

濾胞性(ろほうせい)リンパ腫は、病巣部が限局しているようにみえても、実は目に見えない転移が全身のリンパ組織に広がっている傾向があります。全身的な治療手段としての化学療法や抗体療法が、一般的な選択です。病期が1〜2期の早期であれば、30〜36Gyの比較的少ない量をあてる放射線治療により、およそ50%の患者さんが治癒します。

4)ホジキンリンパ腫、連続して広がる傾向を示す悪性度の低いリンパ腫

ホジキンリンパ腫は欧米人に多く日本人にはまれです。リンパ節から発症し、連続してリンパ節に広がっていきます。連続した広い範囲のリンパ節(領域)を放射線で治療することにより、80〜90%の患者さんが治癒します。しかし現在の標準治療は、先に化学療法を行って、放射線治療する範囲を狭くし、放射線の副作用を軽くする方法です。

5)皮膚のT細胞リンパ腫:菌状息肉症(きんじょうそくにくしょう)

皮膚だけに広がっていく特殊な悪性リンパ腫です。このリンパ腫に対しては、全身の皮膚表面だけを治療できる電子線を用いた特殊な放射線治療(全皮膚電子線治療、部分照射他)を行うことがあります。全皮膚電子線治療は、立った姿勢で体の前後左右斜めの6方向から、くまなく全身の皮膚に放射線を照射します。

6)NK/T細胞リンパ腫など特殊なリンパ腫

ほかにも特殊な悪性リンパ腫が何種類かあります。鼻や脳、睾丸(こうがん)等に発生したリンパ腫、結核後の膿胸(のうきょう)、免疫不全に関連したリンパ腫、臓器移植に関連したリンパ腫等は、患者さん個々の病状に特に配慮して放射線治療を行います。

7)血液幹細胞移植、骨髄移植の際の全身照射

全身照射の役割は、悪性リンパ腫細胞の死滅と拒絶反応の予防の2つがあります。全身照射には、抗がん剤と交叉耐性(こうさたいせい)がないこと、照射不能の部位がないこと、重要な臓器が遮蔽(しゃへい)できること等の利点があります。病院ごとに全身照射の方法は少しずつ違っていますが、どれが優れているということはあリません。ただし、準備や治療に時間がかかります。

表 放射線治療に関する主な急性有害反応

照射部位 急性有害反応の種類 自己管理・看護 治療
皮膚 1.発赤、紅斑、ぴりぴり感、びらん、爪変形 保護 ステロイド軟膏
2.潰瘍(かいよう)、浸出液、かさぶた   消毒
3.脱毛 かつら 帽子  
頭部

脳神経
1.倦怠感、脱力感 安静・休息 精神安定剤など
2.吐き気、嘔吐(おうと)、頭痛 運転注意 制吐剤(せいとざい)など
3.味覚やにおいの変化   (亜鉛製剤)
4.耳の炎症により難聴、耳鳴り    
5.レルミッテ兆候(屈曲位(くっきょくい)で下肢に電撃痛)  
(自然軽快)
6.末梢神経障害(便秘、しびれ、こわばり)   ビタミン剤(B12)
頭頸部 1.唾液の減少、口の渇きとねばつき、口内炎 うがい 人工唾液など
2.味覚の変化や低下 やさしい歯磨き ハチアズレ
3.においの変化    
4.食欲の低下、吐き気   制吐剤、点滴
5.飲み込み困難・違和感、口と喉の痛み   鎮痛剤、粘膜保護薬
6.体重減少、だるさ 休息 点滴
7.呼吸時の違和感・気道の腫(は)れ   吸入
8.嗄声(させい:声がれ)、咳、声が出しにくくなる
蒸気吸入 吸入
9.鼻閉(鼻づまり) 加湿器 鼻洗浄
10.外耳道の炎症(じくじく)、難聴、耳鳴り   点耳薬
11.目の乾燥、易刺激性(いしげきせい:ごろごろ感)   点眼薬
胸部

(呼吸器
 乳腺
 食道)
1.食道の炎症による痛み、飲み込み困難、胸やけ
軟菜(軟らかくしたおかず)、お粥 粘膜保護薬
2.食欲低下、吐き気、嘔吐、体重減少 流動食 点滴
3.肺の炎症による呼吸苦、痛み、熱、咳
 
蒸気吸入 鎮咳剤(ちんがいざい)、ステロイド剤
 (放射線性肺臓炎)   酸素
上腹部

消化器
1.胃炎、胃潰瘍、食欲低下、嘔気(おうき)、嘔吐 軟菜(軟らかくしたおかず)、お粥 抗潰瘍剤、粘膜保護薬、点滴
2.腸の炎症で下痢(げり)を生じる 低残渣(ていざんさ)、低脂肪食 下痢止め、点滴
骨盤部

(泌尿器
生殖器)
1.下痢 消化良い食事 下痢止め
2.直腸・肛門の炎症により、痛み、浸出液、出血が生じる ウォシュレット
水分補給
軟膏、保護剤
3.膀胱(ぼうこう)の炎症により、頻尿、痛み、血尿が生じる   止血剤/鎮痛剤
4.生理の周期の異常 パートナーの理解  
5.膣からの分泌液、痛み、易刺激性、出血   膣錠
注 上記以外にもごくまれに予期せぬ急性有害反応が生じることがあります。

表 放射線治療に関する主な遅発性有害反応
照射部位 遅発性有害反応の種類 自己管理 治療
皮膚 1.光沢のある薄い皮膚、皮膚の肥厚 保湿クリーム 非ステロイド軟膏
2.皮膚の色の変化:色素沈着、脱色    
3.毛細血管の拡張    
4.永久脱毛、薄い頭髪、巻き毛 かつら 帽子  
頭部

(脳・
 脊髄)
1.永久脱毛、髪の性状や色の変化 かつら 帽子  
2.眠気、疲れ、集中力の低下、根気がなくなる 運転注意  
3.複雑な計算を間違いやすくなる ゆっくりした作業 リハビリ
4.思考力および記憶力の低下(大線量の場合)    
5.下垂体(かすいたい)の機能低下   ホルモン補充
頭頸部

(耳鼻
 咽喉
 領域)
1.口の渇き、味覚の変化 うがい 人工唾液
2.歯の腐食、歯肉の変化 歯磨き イソジン
3.照射部位のむくみ(特に下顎部(かがくぶ))    
4.嗄声、痛み、飲み込みや呼吸時の違和感 蒸気吸入 吸入気管切開
5.骨、特に下顎骨の障害(大線量の場合) 加湿器 リハビリ
6.目の乾き、白内障、視力障害(大線量の場合)   点眼薬
7.甲状腺(こうじょうせん)の機能低下   ホルモン補充
胸部

(呼吸器
  乳腺
  食道)
1.放射線性肺臓炎による痛み、熱、咳 蒸気吸入 咳止め
2.肺の萎縮による呼吸苦(放射線性肺繊維症) 呼吸訓練 ステロイド剤
3.乳房の皮膚乾燥 クリーム  
4.まれに心筋梗塞(しんきんこうそく) 安静 循環器科
鎮痛剤
5.肋骨骨折(ろっこつこっせつ、大線量の場合)    
上腹部
(消化器)
1.肝臓、腎臓の機能障害 減塩食 内科診察
2.まれにイレウス(大線量の場合) 低脂肪食 抗胃潰瘍剤
骨盤部

(泌尿器
生殖器)
1.卵巣機能低下により不妊、早期閉経を生じる   ホルモン補充
2.膣粘膜乾燥、萎縮(いしゅく)、痛み、性的機能の低下 保湿剤
パートナー理解
膣錠
下剤、保護剤
3.まれにイレウス、慢性の下痢(大線量の場合)    
4.膀胱の萎縮、頻尿、血尿、繰り返す膀胱炎    
5.会陰部(えいんぶ)や下肢のむくみ 弾性ストッキング  
四肢

(骨軟部)
1.軟部組織や筋肉の萎縮による運動制限、腫脹 過負荷な運動をしない リハビリ
2.関節の障害による不可逆性の可動制限、痛み、関節炎 弾性包帯 鎮痛剤・手術
3.照射部の四肢の腫れ(大線量の場合) マッサージ ハドマ
注 上記以外にもごくまれに予期せぬ遅発性有害反応が生じることがあります。


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