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悪性リンパ腫の造血幹細胞移植:同種移植(あくせいりんぱしゅのぞうけつかんさいぼういしょく:どうしゅいしょく)

更新日:2006年10月10日    掲載日:2006年10月10日

1.はじめに

悪性リンパ腫細胞を壊して病巣を消失させたり小さくしたりするために、“抗がん剤や全身放射線照射による移植前処置”の後、自家末梢血幹細胞移植あるいは同種造血幹細胞移植を行います。しかし、このような自家末梢血幹細胞移植や化学療法をした後に悪性リンパ腫が再発してしまった患者さんには、同種造血幹細胞移植が治癒を目指した唯一の治療になります。これは、同種移植には自家移植にはない“ドナー細胞による同種免疫反応”が備わっているからです。この反応は、抗がん剤では根絶できない悪性リンパ腫にも一定の効果が期待できます。ただ、国内や欧米の治療経験を考えると、白血病への効果とは異なり、悪性リンパ腫にはこの免疫反応の力は弱いように思えます。加えて他項でも述べるように、この同種造血幹細胞移植には、重度の副作用が多く発生することも事実です。そこで実際には、患者さんの強い希望に応じる形で、わずかな可能性にかけて同種移植を行うというのが現実です。その際には、抗がん剤に対して一定の効果を示す患者さんに移植することが、最低限の条件になります。逆に、移植前に行われた化学療法で一定の効果があった悪性リンパ腫の患者さんに対しては、適切な同種移植を行えば治癒する可能性が高まるともいえます。

一方で、大量化学療法と自家末梢血幹細胞移植後に再発したリンパ腫の患者さんに対して、骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植(ミニ移植)を行ったところ、治療成績は比較的良いという報告がアメリカから出ています。これは、支持療法のレベルが年々向上していることが大きく寄与しているからだと考えられます。それでも、全身状態が良い若年者であること、HLA適合ドナーがいること、同種移植前に行われた化学療法の効果が高いこと等の条件がそろえば、大量化学療法と自家末梢血幹細胞移植後の再発であっても、ミニ移植を検討する余地はあるかもしれません。問題は、若年の患者さんに対してミニ移植を選択するかどうかです。これについては意見が分かれるところです。

以下に、各病型ごとの現状を述べます。悪性リンパ腫に対する同種造血幹細胞移植にはまだ十分なデータがなく、研究的治療の段階です。

2.濾胞性リンパ腫

図1 進行期(III、IV期)濾胞性リンパ腫
図1 進行期(III、IV期)濾胞性リンパ腫

濾胞性(ろほうせい)リンパ腫は進行が緩(ゆる)やかですが、骨髄を含め全身に広がりやすいリンパ腫です。しかし、悪性リンパ腫の中では最も同種造血幹細胞移植の効果が期待できます。濾胞性リンパ腫に対する新しい治療薬が次々と現れていますが、いずれを使っても治癒が見込めるかどうかは不明です。

しかし濾胞性リンパ腫は、後述するびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に移行することがあります。移行するとリンパ腫の進行が早い場合が多いため、同種造血幹細胞移植の効果が期待できない可能性が高まります。過去の報告から、同種造血幹細胞移植を受ける濾胞性リンパ腫の患者さんは、診断時の臨床病期がIIIかIV、初回化学療法から再発・再燃を繰り返しても最終の化学療法までが3レジメン前後、かつ大量化学療法と自家末梢血幹細胞移植を受けていない、という条件を満たしている場合が多いようです。

前述のように悪性リンパ腫では、移植前に行う化学療法(移植前処置ではありません)が効いていることが前提になります。一方、濾胞性リンパ腫の場合も、もちろん効いているほうが良いのですが、効果が乏しい場合でも、3割以上の患者さんに長期生存をもたらすという国内データがあります。濾胞性リンパ腫に対する同種移植は再発率が低いため、55〜80%の確率で長期生存を望めます。しかし、治療関連死亡に至るような重篤(じゅうとく)な合併症を生じる危険性もあります。他の治療法では、治療関連死亡に至るような重篤な合併症を生じる可能性は、非常に低いと考えられます。同種移植を選択する場合には、患者さんとその家族は主治医と十分に話し合っていただく必要があります。

3.びまん性大細胞型B細胞リンパ腫

図2 進行期(III、IV期)中悪性度のリンパ腫1
図2 進行期(III、IV期)中悪性度のリンパ腫1

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(中悪性度)は、悪性リンパ腫の中では最も頻度が高いタイプです。リンパ腫の進行は早いことが多いため、同種造血幹細胞移植を行なうタイミングをうまく合わせないと、治療効果が期待できなくなります。最初の再発時には、救援化学療法、大量化学療法、自家末梢血幹細胞移植(+局所放射線療法)の順に治療を受けるのが基本です。その後、再発したところで同種造血幹細胞移植を検討する場合が大多数です。同種造血幹細胞移植前に行う化学療法(移植前処置ではありません)の効果が高いことは、非常に重要な点です。同種移植は、大量化学療法や自家末梢血幹細胞移植と比較すると再発率が少ないことが知られていて、10〜40%の確率で長期生存が望めます。一方、たとえ同種造血幹細胞移植を行っても、早期に再発したり、重篤な合併症が生じる可能性があります。大量化学療法や自家末梢血幹細胞移植などを含む他の治療では、治療関連死亡に至るような重篤な合併症を生じる可能性は低いと考えられます。同種移植を選択する場合には、主治医と十分に話し合っていただく必要があります。

4.末梢性T細胞リンパ腫(成人T細胞白血病/リンパ腫を除く)

図3 進行期(III、IV期)中悪性度のリンパ腫2
図3 進行期(III、IV期)中悪性度のリンパ腫2

末梢性T細胞リンパ腫(中悪性度)は、同種造血幹細胞移植の効果が期待できるタイプのリンパ腫です。欧米では非常に治療成績が悪いリンパ腫とされていますが、アジアでは異なるようです。同じ病気でも、地域によって異なる性質を備えているためではないかと考えられています。過去の報告から、同種造血幹細胞移植を受ける末梢性T細胞リンパ腫の患者さんは、診断時の臨床病期がIIIかIV、初回化学療法から最終化学療法までの化学療法の数が2つ前後、大量化学療法と自家末梢血幹細胞移植を受けていない等の場合が多いようです。同種造血幹細胞移植前に行う化学療法(移植前処置ではありません)の効果は高いほうが良いですが、効果が乏しい場合でも、4割以上の患者さんに長期生存をもたらすという国内データがあります。末梢性T細胞リンパ腫に対する同種移植は再発率が低いために、55〜70%の確率で長期生存を望めます。一方で、他のリンパ腫と同様に、治療関連死亡に至るような重篤な合併症を生じる危険性があることも、十分に知っておく必要があります。

5.マントル細胞リンパ腫

マントル細胞リンパ腫(中悪性度)は進行は緩やかですが、骨髄を含め全身に広がりやすいタイプのリンパ腫です。通常の移植では治療関連死亡率が非常に高いため、ミニ移植を優先して考慮すべき悪性リンパ腫と考えます。ミニ移植では7割以上の確率で長期生存が可能という報告がありますが、同時に治療関連死亡に至るような重篤な合併症を生じる危険性があることも、十分に考える必要があります。

6.NK/T細胞リンパ腫

NK/T細胞リンパ腫は主に鼻に病変がある場合が多く、診断時の臨床病期はIかIIですが、進行が非常に早いリンパ腫です。残念ながら再発した場合、救援化学療法の後に大量化学療法と自家末梢血幹細胞移植を受けるか、あるいは同種造血幹細胞移植を受けるかの選択が必要になります。寛解導入療法を行っても寛解にならなかった場合には、同種造血幹細胞移植を検討します。また、診断時の臨床病期がIIIかIVの場合、初回寛解導入療法に引き続いて同種造血幹細胞移植を検討することもあります。同種造血幹細胞移植を行うタイミングをうまく合わせないと、治療効果が期待できなくなります。約10〜25%の確率で長期生存が望めますが、同種造血幹細胞移植を行っても早期に再発したり、重篤な合併症で死に至る危険性があります。他の治療では治療効果は乏しいものの、治療関連死亡に至るような重篤な合併症を生じる可能性は低いので、この点についても十分に考える必要があります。

7.ホジキンリンパ腫

ホジキンリンパ腫は若年者に多く、適切な初期治療で治癒が見込めるまれなリンパ腫です。しかし、残念ながら再発した場合、救援化学療法、大量化学療法、自家末梢血幹細胞移植(+局所放射線療法)の順に治療を受けます。同種造血幹細胞移植は、再度再発した時点で検討される場合が大多数です。同種造血幹細胞移植前に行う化学療法(移植前処置ではありません)の効果が高いことは、非常に重要な点です。ミニ移植によって20〜50%の確率で長期生存が可能という報告もありますが、同種造血幹細胞移植を行っても早期に再発したり、重篤な合併症が生じる危険性があります。

8.リンパ芽球性リンパ腫

リンパ芽球性リンパ腫(急性リンパ性白血病)は若年者に多く、適切な寛解導入療法および寛解後の化学療法によって良好な成績が得られるリンパ腫です。残念ながら再発した場合、救援化学療法の後に大量化学療法と自家末梢血幹細胞移植を受けるか、あるいは同種造血幹細胞移植を受けるかの選択が必要になります。寛解導入療法を行っても寛解にならなかった場合には、同種造血幹細胞移植を検討します。10〜40%の確率で長期生存が望めます。ただし、同種造血幹細胞移植を行っても早期に再発したり、重篤な合併症が生じて死に至る可能性がある点は同じです。


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